凡人の追憶

アラサー会社員による誰の役にも立たない雑記帳です。

アイアムアヒーロー

アイアムアヒーローを観た。

連休中に梅田で観たのだが、カップルでごった返した劇場は満席であった。両隣をカップルに挟まれ居心地の良いものではなかったが、まあもう慣れた。

右隣は付き合いたてか、それ以前のアベックにみえ、ホラー映画という名の吊り橋で身体を寄せ合っている。驚きおののいた女の肩を抱くほど容易なことはない(経験無)。

 

さて「アイアムアヒーロー」かなり面白かった。(注:ほんの少しのネタバレあり)

プロットは至極単純。うだつの上がらない漫画家アシスタントの英雄(ひでお:大泉洋)は、完全に名前負けしているおっさんである。「英雄(えいゆう)と書いて英雄(ひでお)です。」と名乗っているが、成功できない焦燥感ややるせなさから自信喪失し、妄想癖まで付いてしまっている。本作はそんな悲しい彼が、人々のZQN化(ゾンビ化)によって破滅していく世界で、本当の英雄(えいゆう)になっていく成長譚である。

ZQNとは何か?有村架純は一体何者なのか?長澤まさみはナゼ脱がないのか?などという問いには一切答えてくれない。ただシンプルに英雄のおはなしなのだ。

 

僕はとりわけ前半部が好きだ。日常に漂う違和感が、あるとき決壊を迎える。

英雄にとっての決壊は、彼女・てっこ(片瀬那奈)のZQN化だった。ベッドから転げ落ち、陸に打ち上げられた魚の如くぴちぴちと跳ねるてっこを郵便受けの隙間から見る英雄。刹那、豹変したてっこが襲いかかる。これら原作1巻ラストにおける衝戟を上手く映像に落とし込み、素晴らしい恐怖感を演出している。

その後、ZQNで溢れた都市から英雄は脱出するのだが、そこまで全く息をつかせない。

あるシーンでは、左隣のアベックがビビってビクンッとなり、ポップコーンを撒き散らしていた。達観しているようだが、僕も跳び上がった。「インターステラー」で、バカ博士が爆発四散した以来のビクつきだった。

 

あと特筆すべきことは、妥協のないゴア描写だろう。頭は吹っ飛び、血は飛沫をあげる、芯のあるゴアだ。もうこれをやってくれただけで満足といった出来になっている。

まだ劇場で観るチャンスはあるので、是非ご覧頂きたい。

僕は不覚にも大泉洋に心を奪われてしまった。ヘリコプターでゲロを吐き*1、原付でウィリーし*2ユーコン川で睾丸を洗った*3男にだ。あまりにも不覚だ。

 

もっと正直に言うと、少し泣かされてしまった。ボンクラ過ぎてグッと来る。

そんなボンクラが銃爪を引くとき、観客は彼の姿に観惚れていただろう。

*1:水曜どうでしょう 「サイコロ3 ~自律神経完全破壊~」後編・第二夜

*2:同上 「原付東日本縦断ラリー」第四夜

*3:同上 「ユーコン川160キロ」第三夜